調査結果
一覧はこちらHIV陽性者の抗HIV療法に対する意識・経験調査結果
この調査研究結果報告は、HIV 陽性者向けのウェブ調査の集計結果を紹介するものです。調査研究に参加いただいた HIV 陽性者のみなさん、調査協力をしてくれた NGO/NPOの方々はじめ、多くの方々に結果をフィードバックし、また結果を活用してもらうために、公表するものです。
調査結果は、以下のリンクより全文をPDFでダウンロードすることもできます。
<結果報告書PDF版>
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PDF 全文(48ページ)
分けてダウンロードする場合
PDF1 表紙・本研究の概要・調査研究結果の概要・どんな人が回答してくれたか(6ページ)
PDF2 パート1 健康状態・パート2 通院(7ページ)
PDF3 パート3 HIV陽性診断直後・パート4 身体障害者手帳取得(15ページ)
PDF4 パート5 治療(7ページ)
PDF5 パート6 治療薬の変更・おわりに(13ページ)
【この調査について】
抗HIV療法に対する意識・経験等について、日本国内のHIV陽性者ではどのような状況にあるのかを明らかにすることを目的として、2024年4月8日から5月8日に無記名自記式ウェブ調査を行いました。調査回答者は931人でした。得られた回答データを精査し、不正回答・重複回答を除外した927人の回答を有効回答として分析を行いました。
1.健康状態
- 健康状態は全体としては良好でしたが、約7割で何らかの慢性疾患があるとし、また約7割では何らかの自覚症状があるとしていました。PHQ-9というスケールを用いたところ、4人に1人がうつ病性障害の可能性があることがわかりました。
2.通院
- 全体の96%が定期的に通院しており、通院頻度は3ヶ月に1回程度が約78%でした。
- 通院の機会に医師と話す平均時間は、定期通院者の約半数で「5分以上10分未満」となっていました。医師と話す・話した事のある内容としては、「最近の体調について」「薬の飲み忘れについて」が各々半数以上と多くなっていました。
3.HIV陽性診断直後
- HIV陽性診断された時期別にグループ化して比較検討したところ、診断直後に「これで自分はまもなく死ぬんだ」という思いになる人の割合は診断時期が近年になるほど少なく、「HIVの治療を受ければ健康を維持することができるので、ほっとした」「今後の暮らしや人生設計を変えていこうと思った」という人の割合は診断時期が近年になるほど増えていることがわかりました。また、いずれのグループでも、HIV陽性診断直後にネガティブ情動(気分)の平均値は高いのに比べ、現在(=調査時点)は低い平均値でした。一方、いずれのグループでも、ポジティブ情動(気分)の平均値はHIV陽性診断直後は低くなっていましたが、現在は高い平均値でした。ネガティブ・ポジティブいずれの情動についても、1996年以降にHIV陽性診断された人のいずれのグループでも、ほぼ同じ状況でした。
4.身体障害者手帳取得
- 免疫機能障害で身体障害者手帳を取得できないために抗HIV薬での治療を始めることを断念したことがある人は55人(全体の6%)おり、このうち過去1年間に断念した人は18人(33%)でした。この18人は自由記載欄に、手帳発行基準を満たすまで待たされることの恐怖や不安、いらだち、悲しい・むなしい、制度が古い、などを記していました。うち10人は調査回答時点でまだ取得していない・申請していない状況でした。
- 免疫機能障害で身体障害者手帳を取得しようとしていない50人に、その理由をたずねたところ「担当窓口の人に自分のことが知られてしまうと思うから」「助成制度を利用しなくても医療費を十分に払えると思うから」が多くなっていました。
- この1年間に役所や保健所、福祉事務所等の公的機関で、HIV陽性であることを理由に不当な扱いを受けたことがある人は25人(3%)でした。役所や医療機関で受けた扱いについての記載が多くなっていました。
5.治療
- 通院している人のうち、現在HIVの治療薬を処方されている人は98%でした。
- 通院していても抗HIV薬を処方されていない理由としては「医師から提案されたため」「身体障害者手帳を取得するまえの検査を受ける必要があるため」「身体障害者手帳の申請をするための準備をしているため」が多くなっていました。
- 服薬状況は、毎日忘れずに飲む、あるいはたまに飲み忘れる、をあわせると、ほぼ全員で良好でした。
6.治療薬の変更
- 抗HIV薬の変更経験がある人は61%でした。
- 過去3年以内に、新しい抗HIV薬について、医療関係者から「しばしば/たまに紹介されたことがある」人は、定期通院者のうち約半数でした。新しい治療薬が発売になったら、医療関係者から「とても紹介してほしい」「そこそこに紹介してほしい」をあわせると96%になりました。今の治療薬で順調に治療できていても、より良いと思う別の薬を紹介されたら治療薬を変更したいと考えている人は84%にのぼりました。